水野光義さん(音更町・(有)水野建設)
生き残りのために新住協へ
水野建設は、水野光義さんのお父さんが設立した工務店。後を継ぐために入社したときは、大工の見習いとしてスタートしました。「昼は大工として働き、夜はお客さまのためにプランを考える毎日でした」と水野さん。
当時は住宅がたくさん建った時代。「家を建てたい」とお客さまから声を掛けられることも多かったのです。
しかし、好景気はいつまでも続きません。住宅着工数が減少し、ハウスメーカーが十勝にも次々と進出し、知名度の高さなどで次第に定着していきます。地元工務店は、生き残りのために知恵を絞ります。
その頃、水野さんは新住協を知りました。在来軸組工法の革新を唱える「新在来木造構法」で高断熱・高気密住宅を造り始めていました。水野さんは「これからは質の高い住宅を建てる必要がある。新在来構法をマスターしていかないと生き残れないのではないか」と思いました。
当時、高断熱・高気密住宅の工法は数多く出ましたが、新住協のように技術情報をオープンにしているのは非常に珍しく、そこも魅力でした。
カラマツ住宅に取り組む
新住協に入会し、新在来構法をマスターした水野さんは、次のステップに進みます。新住協では地元の木材を使った家づくりにも早くから注目してきました。十勝で地元産木材というと、カラマツ材が思い浮かびます。しかし、住宅用には利用されていませんでした。当時は「完成後に木材の反りや暴れなどの狂いが出ない家」を目指して人工乾燥材が取り入れられ始めた頃でした。カラマツ材の評判は、「暴れる、反る、表面が割れる」というもの。しかし、カラマツ材の有効利用のために高温乾燥技術が進み、住宅建築用として使えるようになりました。
しかし、水野さんは興味はあったものの、採用することに躊躇していました。「お客さまにお引き渡しした後に柱が痩せたり反ったりしてしまうのは工務店の責任だと考えていました。私の目から見ると、カラマツの木を使うとクレームの嵐になるのではないかと心配しました。昔の大工は、何年もかけて木を自然に乾燥させてから住宅に使ったものです」と言います。
ちょうどその頃、新住協会員であるホームテクト佐藤さんのカラマツ住宅の現場を見る機会があり、家づくりの考え方にも触れました。それは、良いところも悪いところも含め情報をお客さまに公開した上で「いい」と言ってくださるお客さまと家づくりをするというもの。カラマツ材の強度などプラス面を話した上で、ねじれ、反り、割れなどの問題が出る可能性があることも話し、それが一定限度以内なら住宅の構造強度にはほとんど影響を及ぼさないことなどを話していました。
「お客さまの理解をいただいて建てるという考え方に非常に共感しました」と水野さん。
それ以来、水野さんもカラマツ住宅に積極的に取り組むようになります。天然素材としての質感、経年変化で色が変わっていく味わい、特徴的な木目など、十勝の地元産材として個性があり、お客さまの理解も得られるようになりました。
人が育つ、地元にお金が残る家
水野さんのこだわりは、カラマツだけではありません。職人の手仕事を大事にし、建具や家具なども手づくりし、天然の塗り壁を使うことも勧めています。
「既製品を多く使い、規格化された合理的な家ではなく、手間を惜しまない手づくりの味わいある家を目指しています。この家づくりでは、多くの職人を必要としますが、逆に言うと地元で技術ある大工や職人を育てることにもつながりますし、お金が地元に残って地域経済のためにもなります」と水野さん。
一方で、お客さまに安心していただくための取り組みも進めています。現在は北海道の「北方型住宅」を標準にしています。これは、住宅の設計書、契約書などさまざまな書類を第3者機関が保存し、必要なときに活用できるものです。また、北方型住宅基準は通常の住宅よりも厳しい基準が適用されるため、質の高い住宅になります。
今後は、小さな家にも取り組む予定です。家族の人数が少なくなり、ムダのないローコストな家を目指しています。
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